インフラエンジニアがフリーランスになる前に知っておくべきこと

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インフラエンジニアとして数年の経験を積み、「そろそろフリーランスになろうか」と考え始める時期があります。クラウドの設計・構築ができる、IaCで自動化もやってきた、案件サイトを見れば月額80万円以上の案件がある。独立しない理由がないように感じるかもしれません。

しかし、実際に独立してみると想定外の壁にいくつもぶつかります。私自身、SIerで6年間インフラ設計・構築に携わった後にフリーランスになりましたが、技術力とは全く別の部分で苦労しました。この記事では、インフラエンジニアがフリーランスになる前に知っておくべき現実と、具体的な準備についてお伝えします。

最初の案件を獲得するまでのハードル

フリーランスになって最初に直面するのが、案件獲得の難しさです。会社員時代は営業部門が仕事を取ってきてくれましたが、フリーランスは自分で動かなければ何も始まりません。

エージェント登録の現実

多くのフリーランスエンジニアはエージェント(案件紹介サービス)を利用します。登録自体は簡単ですが、登録したからといってすぐに案件が決まるわけではありません。

初回の面談で聞かれるのは「何ができるか」ではなく「何をやってきたか」です。職務経歴書の書き方ひとつで紹介される案件の質が変わります。エージェント選びのポイントやスキルシートの書き方についてはフリーランスエージェントの選び方で詳しく解説しています。会社員時代に「AWSの設計・構築をやっていました」では弱く、「従業員3,000名規模のECサイトをAWS上にマイグレーションし、CloudFormationで環境構築を自動化、月間コストを30%削減した」のように具体的な実績と数値で語れることが重要です。

面談で落ちることもある

エージェント経由の案件にも面談(顔合わせ)があり、そこで見送りになることは珍しくありません。特にフリーランス経験がない最初の面談は、実績の見せ方に慣れておらず苦戦しがちです。最初の案件が決まるまで1〜2ヶ月かかるケースは十分にあり得ます。その間の収入はゼロです。

税務と会計の準備

会社員時代は年末調整で完結していた税務処理ですが、フリーランスになると自分で確定申告をしなければなりません。

開業届と青色申告

独立したら速やかに税務署へ開業届を出し、同時に青色申告承認申請書を提出します。青色申告は最大65万円の特別控除が受けられるため、これをやらないと大きな損失です。ただし、複式簿記での帳簿管理が必要になります。

会計ソフトは必須

帳簿を手作業でつけるのは現実的ではありません。freeeやマネーフォワードクラウドなどの会計ソフトを使うのが一般的です。月額1,000〜3,000円程度ですが、慣れるまではソフトの操作自体に時間がかかります。

売上・経費の仕訳、請求書の発行、銀行口座やクレジットカードの連携設定など、最初のセットアップには丸一日以上かかると思ってください。さらに、インボイス制度への対応として適格請求書発行事業者の登録も検討が必要です。

税理士を使うかどうか

年間15〜30万円の費用がかかりますが、税理士に依頼すると帳簿管理と確定申告の負担が大幅に減ります。特に独立初年度は不慣れな作業が多いため、税理士に任せて本業に集中するという選択肢も合理的です。一方で、自分で帳簿をつけることで収支感覚が身につくという利点もあります。

案件と案件の間の精神的プレッシャー

フリーランスにとって最も辛い時期のひとつが、案件の間の「待機期間」です。

売上ゼロの月がある

会社員は月末になれば必ず給与が振り込まれます。しかし、フリーランスは案件が途切れると売上がゼロになります。次の案件が決まるまでの1〜2ヶ月間、貯金を切り崩しながら過ごす精神的負担は、経験した人にしかわかりません。

特にインフラエンジニアの案件は3〜6ヶ月の契約更新が多く、プロジェクトの区切りで突然「次の更新はありません」と告げられることがあります。告知から契約終了まで1ヶ月しかない場合、次の案件探しと現案件の引き継ぎを同時に進めなければなりません。案件間の空白期間をどう乗り越えるかはフリーランスの案件間の過ごし方で具体的な対策を紹介しています。

焦りが判断を狂わせる

待機期間が長引くと、単価を下げてでも早く案件を決めたいという焦りが生まれます。しかし、一度低い単価で入ると、そこから単価を上げるのは容易ではありません。待機期間を乗り越えるためにも、最低でも生活費6ヶ月分の貯蓄は独立前に確保しておくべきです。

成功する人と苦労する人の特徴

フリーランスとして安定した収入を得ているインフラエンジニアと、独立後に苦労しているエンジニアの間には、いくつかの明確な傾向があります。

安定して稼いでいる人の特徴

  • 特定の技術領域で深い実績がある(AWS設計構築3年以上、Kubernetes運用経験など)
  • 職務経歴書を具体的な数字と成果で書ける
  • 案件終了の1〜2ヶ月前から次の案件を探し始める
  • 技術コミュニティや勉強会で一定の人脈がある
  • 会計処理や契約管理を仕組み化している

苦労しがちな人の特徴

  • 経験年数は長いが、特定のスキルが浅い(広く薄い経験)
  • 「会社が嫌だから」という消去法でフリーランスを選んでいる
  • 営業活動や自己PRが苦手で、エージェント任せになっている
  • 単価だけを見て案件を選び、スキルの積み上げを考えていない
  • お金の管理が大雑把で、税金の支払いに慌てる

特に「会社が嫌だから独立する」というのは危険な動機です。フリーランスには会社員とは別種のストレスがあります。人間関係の悩みは減るかもしれませんが、収入の不安定さや自己管理の難しさが新たな悩みになります。今の会社に不満がある場合は、独立ではなくクラウドインテグレーターの成長の天井を踏まえた転職という選択肢も検討してみてください。

独立前のチェックリスト

フリーランスとして独立する前に、以下の項目を確認してください。

資金面

  • 生活費6ヶ月分以上の貯蓄があるか
  • 国民健康保険料・住民税の支払いに備えた資金があるか(住民税は前年所得に基づくため、独立1年目に会社員時代の高額な住民税を支払う)
  • 税理士費用や会計ソフトの初期費用を見込んでいるか
  • 住宅ローンやクレジットカードの審査を会社員のうちに済ませたか

スキル面

  • 主力となる技術領域で3年以上の実務経験があるか
  • 設計書やドキュメントを一人で作成できるか
  • 職務経歴書に具体的な成果を5つ以上書けるか
  • クラウド関連の資格(最低限AWS SAA/SAPレベル)を持っているか

人脈・営業面

  • フリーランスのエージェントに2〜3社登録しているか
  • 元同僚や知人にフリーランスとして稼働することを伝えているか
  • 技術コミュニティやSNSでの発信をしているか
  • 直接契約の可能性がある知り合いがいるか

事務面

  • 開業届と青色申告承認申請書の準備ができているか
  • 事業用の銀行口座とクレジットカードを分けているか
  • 会計ソフトを選定し、基本的な使い方を理解しているか
  • インボイス制度への対応方針を決めているか

独立のタイミング

独立するなら、可能であれば1〜3月は避けた方が無難です。年度末はプロジェクトの区切りで人員整理が行われやすく、案件の新規募集が減る時期です。4〜5月は新年度の予算が動き始めるため、案件が出やすい傾向があります。

ただし、これはあくまで傾向であり、クラウド案件は年間を通じて需要があります。タイミングにこだわりすぎて独立の機会を逃すよりは、準備が整った段階で踏み出す方が良い場合もあります。

まとめ

インフラエンジニアがフリーランスになることは、正しい準備があれば十分に現実的な選択肢です。しかし、技術力だけでは乗り越えられない壁が多くあります。案件獲得の営業力、税務・会計の知識、待機期間に耐えられる資金と精神力。これらを独立前に準備できているかどうかで、フリーランス生活の安定度は大きく変わります。

「フリーランスになれば必ず収入が上がる」とは言い切れません。ただ、準備を怠らず、自分のスキルに合った案件を選び続けられるなら、会社員では得られない自由度と報酬を手にすることは可能です。まずはシミュレーターであなたの現在地を確認し、独立までの具体的な計画を立ててみてください。

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