フリーランスの手取り、会社員とどっちが得か【シミュレーション付き】

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「フリーランスになれば手取りが増える」と漠然と考えていませんか。月額80万円の案件を見て、年収換算で960万円になるから会社員より圧倒的に得だと感じる方は多いと思います。しかし、実際に税金や社会保険料を計算し、さらに会社員時代に見えにくかった福利厚生の価値を加味すると、その差は思っているほど大きくないことがあります。

私はインフラエンジニアとしてSIerに7年勤務した後、フリーランスとして独立した経験があります。独立前に入念にシミュレーションしたつもりでしたが、実際には想定外の出費がいくつもありました。この記事では、フリーランスと会社員の手取りを正確に比較するための計算方法と、それぞれが有利になる条件をお伝えします。

フリーランス月額80万円の手取りシミュレーション

まず、月額80万円のフリーランスエンジニアが年間でどの程度手元に残るかを計算してみます。前提として、年間の稼働を11ヶ月(1ヶ月は案件の切り替えや休暇)とします。

売上から手取りまでの流れ

項目金額(年間)
売上(80万 × 11ヶ月)880万円
経費(後述)▲約60万円
所得(売上 − 経費)約820万円
青色申告特別控除▲65万円
課税所得約755万円

税金と社会保険料の内訳

課税所得が約755万円の場合、以下のような負担が発生します。

項目年間概算
所得税(税率23%・控除額63.6万)約110万円
住民税(約10%)約76万円
国民健康保険料約77万円
国民年金保険料約20万円
個人事業税(5%)約33万円
合計約316万円

つまり、売上880万円から経費60万円と税金・社会保険料316万円を差し引くと、手取りは約504万円になります。

ここで重要なのが、国民健康保険料の高さです。会社員の場合は健康保険料を会社が半額負担してくれますが、フリーランスは全額自己負担です。さらに、国民年金は厚生年金と比べて将来の受給額が大幅に少なくなります。この差は見落とされがちですが、長期的には大きな影響があります。

年収650万円の会社員の手取りシミュレーション

次に、年収650万円(ボーナス込み)の会社員を計算します。

項目金額(年間)
額面年収650万円
厚生年金保険料▲約60万円
健康保険料(本人負担分)▲約32万円
雇用保険料▲約4万円
所得税▲約24万円
住民税▲約30万円
手取り約500万円

数字だけ見ると、フリーランス月額80万円の手取り504万円と会社員年収650万円の手取り500万円は、ほぼ同じです。しかし、ここで終わりではありません。

会社員の「見えない報酬」を金額に換算する

会社員には手取り給与以外にも、金額換算できる福利厚生があります。

福利厚生年間の概算価値
有給休暇(20日取得の場合)約50万円分の労働価値
退職金の積立(年間)約30〜50万円
厚生年金の会社負担分約60万円
健康保険の会社負担分約32万円
研修・資格取得支援約5〜20万円
傷病手当金・労災保険金額算定困難だが重要

これらを合計すると、年間で約180〜210万円の価値があります。会社員の実質報酬は650万円 + 約200万円 = 約850万円と見ることもできます。

フリーランスがこの水準に並ぶには、月額約90〜95万円の案件を安定して受注し続ける必要があります。月額80万円では会社員の方が実質的に得になるケースが多いです。

フリーランスの隠れたコスト

シミュレーション上の経費60万円には、以下のようなものが含まれます。

  • 会計ソフト・税理士費用: 年間10〜30万円
  • 業務用PC・モニター等の機器: 年間10〜20万円(減価償却)
  • 通信費・自宅作業環境: 年間10〜15万円
  • 賠償責任保険: 年間2〜5万円
  • 交通費・交際費: 年間5〜10万円

さらに、数字に表れないコストもあります。確定申告のための帳簿管理に毎月数時間を費やしますし、案件が途切れた月の売上はゼロです。会社員なら風邪で数日休んでも給与は減りませんが、フリーランスの稼働時間は直接売上に影響します。

フリーランスの方が得になる条件

ここまで読むと会社員の方が有利に見えますが、フリーランスの方が明確に得になる条件もあります。

月額単価が95万円を超える場合: 手取りと福利厚生の差を埋めて、なお余剰が出ます。AWS設計・構築とIaCの経験が豊富なエンジニアであれば、この水準は十分に狙えます。職種別の具体的な単価相場はクラウドエンジニアのフリーランス単価で確認できます。

経費を戦略的に活用できる場合: 自宅を事務所として家賃の一部を経費にする、業務に必要な書籍やセミナーを経費にするなど、正当な節税ができると手取りが改善します。具体的な節税方法についてはフリーランスの税金ガイドで詳しく解説しています。

法人化を視野に入れる場合: 年間売上が1,000万円を超えると消費税の課税事業者になります。法人化すれば役員報酬の設定により社会保険料を最適化でき、手取りを大きく改善できる可能性があります。ただし、法人の維持費(年間7万円の最低法人住民税、決算費用など)が発生する点には注意が必要です。

会社員の方が得になる条件

一方、以下のような状況では会社員を続ける方が合理的です。

現在の年収が700万円以上の場合: 福利厚生込みの実質報酬が900万円を超えるため、フリーランスで同等の水準を得るには月額100万円以上が必要です。これはかなり限られたポジションです。会社員として年収が伸び悩んでいる場合は年収が上がらない原因と対策も参考になります。

住宅ローンを組む予定がある場合: フリーランスは会社員に比べて住宅ローンの審査が厳しくなります。独立前にローンを組むという手段はありますが、その後の返済リスクも考慮すべきです。

安定性を重視する場合: 景気後退時にフリーランス案件の単価は下がりやすく、案件数自体も減少します。会社員であれば、業績悪化時も簡単には解雇されません。

手取りだけで判断しないこと

フリーランスか会社員かを選ぶ際に、手取り金額だけで判断するのは危険です。あなたのキャリアの方向性、リスク許容度、家族構成、将来の年金額など、総合的に考える必要があります。

特に見落とされがちなのが年金の差です。厚生年金と国民年金では、65歳以降の受給額に月額5〜10万円以上の差が出ることがあります。フリーランスで不足分を補うためにiDeCoや国民年金基金に加入すると、その分の拠出金が毎月の手取りを圧迫します。

まとめ

月額80万円のフリーランスと年収650万円の会社員を比較すると、手取り金額はほぼ同等です。福利厚生を含めた実質報酬では、会社員の方がやや有利になります。フリーランスが明確に有利になるのは、月額95万円以上を安定的に受注できる場合です。

どちらの働き方があなたに合っているかは、収入だけでなくキャリアプランや生活スタイルにも左右されます。まずはシミュレーターで、あなたのスキルと経験に基づいた現実的な数字を確認してみてください。

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